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キングスマン
2015/09/30(Wed)
「キック・アス」を世に送り出したマシュー・ボーンとジェーン・ゴールドマンの作品とあれば期待が高まる。

ロンドンにある高級紳士服店は、多くの貴族が世界大戦で命を落としたことで宙に浮いてしまった遺産を利用し、円卓の騎士になぞらえたどこの国家・民族・思想主義にも属さない、フリーランスのスパイ本部「キングスマン」だった!
まぁこの設定だけで「アホか」なんだけども、「英国王のスピーチ」で吃音のジョージ6世を演じたコリン・ファースがスタイリッシュな紳士スパイをやるなんて、一体どんな化学反応が起きるのか興味津々なのが人情というもの。

ガラハッドというコードネームを持つハリーは、かつて中東の某国で活動中、部下を失った。
彼は捕えた捕虜が持っていた手榴弾から、ハリーたち仲間を守るために人間の盾となり、命を落としたのだ。
この時共に活動していたランスロットも、現在は優秀なエージェントとなり、世界中で誘拐される要人救出のため、敵のアジトに潜入していた。

この時の「紳士ランスロット」のキレッキレのアクションは痛快。
誘拐犯をぶちのめし、ワインを受け止めてキメたところで「カッコいい!と(心の中で)拍手しようとした瞬間、なんと彼は頭から真っ二つに両断されてしまう。
そう、このテンポと残虐性がこの監督と原作者の持ち味なんだった!
犯人は鋭利な義足をつけた美女で、誘拐された博士をさらわせた張本人は、アメリカ人のIT富豪ヴァレンタイン。うん、眼帯をつけてないサミュエル・L・ジャクソンを久々に見た気がする。

欠員となった「ランスロット」を補充するため、ガラハッドはかつての死んだ部下の息子であるエグジーの元へ向かう。
エグジーは母の再婚相手とその仲間に暴力的に支配される家庭で育ち、すっかりダメダメなチンピラになっていたものの、ハリーはかつて海兵隊員で、子供の頃は体操選手を目指していた身体能力と、父性に飢えるが故にどこか素直さを残す性格に素質を見出し、ランスロット候補としてキングスマンの訓練に入らせる。

ここから物語は、ヴァレンタインが推し進める「地球と生物にやさしい人類撲滅計画」と、エグジーの訓練が同時進行していく構成に。
ヴァレンタインは各分野の研究者や、各国の権力者、大富豪などを誘拐したり勧誘したりして、自分の計画に次々引き入れている。引き入れられた人間は皆一様に耳の下に手術痕があり、最初に誘拐された科学者(なぜかスター・ウォーズのマーク・ハミルが演じている)など、ハリーが追い詰めて詰問しようとしたら脳味噌BANでお陀仏になってしまった。なむなむ。

一方エグジーの方は、貴族主義・エリート主義の連中にいびられながらも、女だてらに最優秀のロキシーと共に難関をクリアしていく。寝てる時にいきなり浸水して脱出方法を考えるとか、犬を育てるとか、スカイダイビングで一人だけパラシュートが開かないなど、色々な困難が準備される。
だけどエグジーは、絶体絶命のピンチだった線路に縛られて列車が来る難関はクリアしたのに、最後の試験である「育ててきた相棒の犬を撃つ」ことができず、不合格。
ランスロットはロキシーが継ぐことになって、ハリーを失望させてしまう。

ちなみにこの「犬を撃つ」は私にも絶対無理だが、実際には空砲だった。だからランスロットも犬は殺していない。
パラシュートも実際は全員についていたし、列車がくると縛られた線路ごと下におりる仕組みだった。
寝室の浸水時には逃げ遅れた仲間が一人死んだのだけど、実はこれも死んでなかったのだそうだ。(あー、けどこっちは死んでてもよかった気がするな…彼女には悪いけどさ。)

それにしてもやっぱりこの映画の中で一番驚いたのは、ヴァレンタインの策にはまったハリーが、教会での「実験」によって最強の戦闘力を見せたものの、そのまま射殺されてしまうということだった。
ええええええええええええええええ!?ハリー死んじゃうの!?ここで!?と、驚きを隠せなかった。
何かの間違いじゃないかとか、別人なんじゃないかとか、実は生きてましたって展開があるんじゃないかと最後まで考えてたけど、残念ながらそれはなかった。

この皆殺しバトルロワイヤルシーンはコミカルながら容赦なく、男も女も串刺し、ナイフ、銃、素手とひたすらバイオレンス。
ヴァレンタインの「人類撲滅作戦」は、彼が世界中にばら撒いた無料SIMカードを通じ、人間の凶暴性を引き出して互いに殺し合わせるという所謂「ダチュラ」作戦。こういう中二病丸出しの世紀末絶望小説、私も昔書いたわ~(恥)

ハリーの死を目の当たりにしたエグジーはアーサーの元へ向かうのだけど、その時異変に気づいてしまう。
ガラハッドの死を悼むアーサーの耳の下に、あの手術痕があったのだ。
ヴァレンタインの手がキングスマンの中にまで伸びていると知り、エグジーは指導教官のマーリンとランスロットの元へ。
SIMカードへの指令はヴァレンタインの私物衛星からなされると知り、ランスロットは衛星破壊、エグジーはアーサーになりすまして、ヴァレンタインが賛同者たちの安全のために用意した隠れ家に乗り込んでハッキングを行う事になる。

潜入劇はお約束とはいえ、ここで正体がバレてピンチに陥ったエグジーがマーリンにやってもらったことがあまりにもバカバカしい結果を招く事に。殺し合いを避けるため、耳の下にチップを埋めた人々がまるで花火のように脳味噌バーンで死んでいく。
それはもう完全に人間花火。BGMまでついちゃって悪ふざけにもホドがある。
とはいえ血飛沫や脳漿が飛び散るばばっちいものではないので、ギャグとして見られるかなという感じ。BGMのおかげで私は劇場でケラケラ笑ってしまった。バカなことするよね~、ホントに。

そしてついに、爆発チップを自分だけは埋め込んでなかった(ズルい!)ヴァレンタインとの最終決戦…の前に、義足の殺人者ガゼルが立ちはだかる。
それにしてもいつでも凶器となる義足で殺人ってのは考えたもんだ。あんなに激しく飛びまわってたら断端部は一体どうなってるのか心配だけども。
その間に皆殺し作戦は決行され、エグジーの母親もエグジーの妹を殺したくて、ランスロットの助言どおり鍵をかけた風呂場の扉を破壊しようとする始末。赤ん坊を殺そうとするってことは、この数分間(数十分間?)で力の弱い子供や年寄りが随分殺されたのかな?

全てが終わった後、エグジーはどうやら無事、新生キングスマンのエージェントとなったようだ。
コードネームは明かされなかったけど、やっぱりガラハッドだったのかなぁ…

とりあえず、人間花火とか、教会バトルロワイヤルとか、世界を救ってくれたら後ろの穴でヤってもいいと言う王女とか、相変わらずバイオレンスでお下劣なブリティッシュ・アクション・コメディ。
キック・アスよりはストーリーがしっかりしているので見応えがあるけど、キック・アスよりはギャグもグロも抑え気味なので、そのへんを期待していくと食い足りないかも。
でもスーツ姿の紳士アクションは優雅かつキレッキレでカッコよく、ガゼルを仕留めた靴の先に仕込んだ毒入りナイフや防弾傘など、英国紳士らしく、かつスパイらしい小物使いやギミックはとても楽しい。

父性に飢えていたエグジーがハリーという師匠を得て成長していく物語でもあるので、それも普通に楽しい。
しかしこの監督、親を殺さないと気がすまないのだろうか…

(2015/10/11 記)
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キック・アス/ジャスティス・フォーエバー
2015/08/15(Sat)
何の前情報もなく、「レディースデイの遅い時間に新宿で見られる映画」を検索したらたまたまヒットしたのが「キック・アス」だった。
そのまま調べるととても面白いと評判のヒーローものだというから、軽~い気持ちで見に行ったら、これまたものすごいスマッシュヒット作品だった。

今回、2を見るにあたってもう一度見たのだが、これは本当に傑作だ。グロいわエロいわで誰にでも薦められるものではないけど、「パルプ・フィクション」や「キスキス・バンバン」を楽しめる人なら絶対お奨め。そしてこういう映画が好きな人はぜひ友達になろう!

というわけで2にも期待していたものの、見そびれたままになってしまった。1回機内上映でやってたのだが、字幕も吹替えもなくて断念。英語ができないってホントに不便だわぁ…

さて、前作でキック・アスとしてヒット・ガールと共にビッグ・ダディの仇を取ったデイヴは、ミンディを師匠としてヒーロー修行に明け暮れる高校生になっていた…って、高校生!?え、デイヴって中学生だったの?!あれで?!マジか!
ケイティともまだつきあってるのかと思ったけど、途中でミンディに迫ってると誤解され、破局したっぽい。

そのミンディともヒーロー活動について意見がかみ合わず、デイヴはSNSで知り合った仲間たち共に街を守る自警団「ジャスティス・フォーエヴァー」に参加するようになる。
この自警団がこれまたインキチっぽい連中ばっかりで、ジム・キャリー演じるミリタリーオタクのストライプス少佐、全然重力を操れないドクター・グラヴィティ、デイヴと昼夜構わずセックスに明け暮れるナイト・ビッチ、戦力になるはずもないリメンバートミー夫妻、ケンカ上等どころか正体は太っちょのマーティだったバトル・ガイと、ポンコツばかり。
でも仲間と共に街を歩くデイヴは楽しそうで、ヒーローはかくあるべしとご満悦。
そんな彼を真面目一徹の父が心配しても、デイヴは聴く耳を持たない。

でもデイヴには魔の手が迫っていた。
前作でヒーロー仲間として偽りの友情を交わしたものの、結果的には「父親殺し」になったキック・アスを執拗に狙うレッド・ミスト。
父であるダミーコが死んだ後、過保護な母親と生きてきたレッド・ミストは、母の事故死をきっかけにSM装束(ママンの趣味らしい)の「マザー・ファッカー」として新たなヴィランを名乗る事に。
ってかお付の人が唯一まともでいい人だったのに、ムショに入ったイカれた叔父さんの命令で撃ち殺されちゃってホントに気の毒だった。つか、あっけなく人が死ぬのがキック・アスなんだけどね。

キック・アスがイカれたヒーロー仲間を集めていくことに対抗し、マザー・ファッカーもとんでもないヴィラン仲間を引き入れていく。
ボクシングでKOされた相手には「ブラック半殺し」(うう、「人種差別発言はやめろ」と言ってくれたお付の彼はもういない…)、名前負けの「チンギス半殺し」、本当にロシアから来た素人さんなので英語が喋れず、しかも大変優しい性格なので悪役演技に苦労したらしい「マザー・ロシア」、そしてマーカスとデイヴが秘密を共有している事にムカついて血迷ったトッドはアス・キッカーとしてこっちについている。このトッドのアホなミスが大きな事件を引き起こすんだけど、そういや最後まで誰も真相を知らんのかな?

そしてもう一人の主役ヒット・ガールことミンディは、ビッグ・ダディ亡き後、引き取ってくれたダディの親友マーカスからヒーロー活動を禁止されてしまう。
普通の女の子として生きることを望まれたミンディは、カーストのトップにいるブルックたちのグループに入り、居心地の悪いギャルズライフを送るものの、案の定意地悪と嫌がらせに晒されて怒り心頭。やっぱりミンディにはイカしたバイオレンスがよく似合う。

彼女たちへの復讐は、「ゲロゲリ棒」で引き起こされた、上から下から噴水のようにゲロと下痢便が飛び出すという世にも恐ろしいもの。これがまた「出しすぎだろっ!」とツッコみまくりたくなるほどの勢いで吹きだした。特に尻からピューッと出るゲリはシュール…
こわっ!ゲロとゲリが同時にってこわっ!

ギャグテイストが続くとヤバい展開になるのは監督が変わっても変わらないらしく、マザー・ファッカーのキック・アスへの復讐はハンパなく、まずはスティンガー大佐のアジトに乗り込んで彼を殺害してしまう。えええええ!?前作ではニコラス・ケイジが殺され、ジム・キャリーもここで退場しちゃうの?

ナイト・ビッチも襲われ(レッド・ミストはデリケートなので人前では勃ちませんでした…チーン)、デイヴの父に至ってはキック・アスだと名乗り出て逮捕され、留置所で殺されてしまう。これはヒドい。
偽者のキック・アスがデイヴの父だとうっかりばらしてしまったのがトッドというのもヒドい。

それにしてもデイヴの母親は脳出血、ビッグ・ダディは殴られた挙句焼き殺され、ダミーコは吹っ飛ばされた。マザー・ファッカーのママは交通事故、デイヴの父親はならず者になぶられて絞殺。なんでキック・アスの周りは皆親が死ぬねん!

そしてついに拉致られたデイヴを、再びヒット・ガールに戻ったミンディが見事な手腕で救い出す。
やっぱりヒット・ガールはカッコいい。クロエ・モレッツたんもすっかり育って子供の身軽さはなくなってしまったけど、その分パンチや蹴りには体重が乗るようになった。本人も生傷だらけながら、楽しんでアクションをこなしたそうだ。

最終決戦はマザー・ファッカーのアジトで、ジャスティス・フォーエヴァーの面々とヴィランの全面対決。
色々と変なヒーローやおかしなヴィランが一杯いるのが、Gガンの「ガンダム勢ぞろい」を思い出させて笑える。ああ、ネーデルガンダムが大量に飛び出して来た時の驚きよ…

マザー・ロシアVSヒット・ガール、マザー・ファッカーVSキック・アス。
容赦なくブン投げられまくったヒット・ガールがドーピングで勝つのはちょっと残念だったかな。前作では彼女が子供ながらに冷静さと冷徹さを持って、一切の容赦なく銃をぶっ放してやっつけるのが痛快だったから余計に。

水槽の上で戦うキック・アスとマザー・ファッカーは、何しろゴジラで主演を務めたアーロン・テイラー=ジョンソンが意外とマッチョなので、本人も「アクションはキツかった」と言っていたクリストファー・ミンツ=プラッツがかなうとは思えない。
面白い仕掛けや武器でもあればよかったんだけど、そうでもなかったな。なぜか水槽にはサメがいて、最後にそこに落ちたマザー・ファッカーは、赤く染まる水の中に消えていった…

全てが終わった後、マーカスとの約束を破ったミンディは、デイヴにお別れのキスをして街を出て行った。
ジャスティス・フォーエヴァーは解散し、デイヴは今日もキック・アスとしてヒーロー活動を続けている。

監督が変わったことで、やっぱり作品の色も変わったなぁという感じ。
ビッグ・ダディとは違って普通の人であるお父さんを殺しちゃう(しかもここに父と息子の葛藤を入れ込んでるもんだからちょっと後味が悪い)とか、そこには前作でいきなり母ちゃんが死んじゃうみたいなギャグっぽさがないから、シリアスなのかギャグなのか置くべき視点がぶれてしまう。

前作は何と言ってもヒット・ガールがキュートで強くてひたすら格好良かったんだけど、今回はそれもちょっと足りなくて、弱いんだけど硬いキック・アスも、一回り大きくなっちゃってそれっぽく見えなくなった。

全部がダメというわけではなかったし、ゲロゲリ棒みたいに面白いシーンもたくさんあったんだけど、前作を超えるものではないのは確か。やっぱり続編は難しいんだね。
今回は特に、2を見る前に1を見てしまったから余計に「あー、やっぱキック・アスはおもろかったなー」と比べてしまったしね。

ちなみにマザー・ファッカーはサメに四肢と急所を噛み千切られたものの、病院のベッドでイライラしながら生きていた。
うーん、3作目もやる気なのかな?

(2015/10/16 記)
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