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エスター
2015/08/15(Sat)
この娘、どこか変だ

原題は「鉄血のオルフェンズ」の元ではないかと言われている「Orphan(孤児)」なので、余計に最後のどんでん返しに「くそっ!やられた!」と思うこと間違いなし。

まず始めに、私は疑うことなく、最後の最後まで気づけなかった。
今思えばヒントはたくさんあったし、そもそもエスターの出どころが精神病院であることを考えれば言わずもがなだし、職業柄もそこに「ん?」と引っかかった事は事実である。
しかしその直感を信じるよりも、刷り込まれた情報によって「母親が精神病者で、精神病院生まれというオチだろう」と自己完結してしまったのだ。

3人目の子供を流産してしまったケイトは、毎晩のように血まみれの悪夢を見てうなされる。
そのことが原因でアルコール依存症になり、末娘で聴覚障害児のマックスが池に落ちる事故に遭ったり、夫とはセックスレスのままで家庭は冷え切り、あまり芳しくない状況で停滞している。

そんな状況を打開しようと、2人は養子を迎えることにする…ってそれが、日本人にはどうにもこうにも理解に苦しむトンでも発想だと思う。
「かーちゃんが不調→夫や子供たちとうまくいかない→家庭が暗く不健康」という構図なら、何よりまずかーちゃんに元気になってもらおうという発想に至ると思うのだけど、ここで「流産した子供の代わりに子供を一人引き取ろう」ということになるってのが全然理解できない。ペットロスじゃないんだからさぁ…なんで今いる子どもたちに、死んだ子への分も愛情を注げないわけ?わからんわ。

まぁやたら脆いかと思いきや、変なところで頑健な白人さんたちの精神構造は我ら有色人種には到底理解できないので、そういう結論に達したという事は理解し、二人は引き取る子供を捜しに児童養護施設へ向かう。
そこでジョンは、子供たちの輪に加わらず、一人で絵を描いているエスターという少女に会う。
彼女の独特の世界観が滲み出た絵をもとに会話する中で、ジョンはエスターの高い知性と落ち着きに魅せられ、それはケイトも同じ。年齢にそぐわないほどの賢さが彼女を可愛らしく見せ、引き取られた先が火事になったという境遇の不幸さは2人の同情を呼ぶ。

やがてケイトとジョンに迎えられたエスターは、兄ダニエルと妹マックスにも紹介され、5人家族として出発する事になる。
ダニエルは会ったその時からエスターが気に入らないらしく、その立ち居振る舞いを胡散臭そうに見て近づかない。
一方エスターは耳が聞こえず、喋れないマックスに優しく接し、手話も覚えてすぐに仲良くなる。
これからはうまくいくと安心する夫婦の単純な思いとは裏腹に、やがてエスターは本性を表し始める…

エスターは知能が高く、大人びている上に、感情を抑制する事もできる。
ダニエルが撃ってしまった鳩を、苦しませるのは可哀想だからと石で叩き潰せる。
エスターはクラシックな服装が好きで、首と手首にいつもリボンを巻いている。
服装や聖書を馬鹿にしたクラスメイトを奇声を発して牽制し、滑り台から突き落とすけど証拠はない。
エスターは風呂に入る時は必ず鍵をかける。
家族に対して鍵をかけるのは…と鼻白むケイトに、なら歌を歌ってるから無事を確認してと知恵が回る。
エスターはパパとママのセックスを見ても顔色一つ変えない。
気まずそうにいいわけに来たママに、「ただのファックでしょ?」と答えて動揺させる。

やがてエスターの行動に疑問を抱き始めたケイトが養護施設に問い合わせると、担当のシスターは彼女の出自について重大な秘密を掴み、それを知らせようとやってくる。何しろ彼女が引き取られる先の家族が皆、一様に命を落としているというのだから怪しい。
エスターにとって、そんな情報を持っている彼女は邪魔。
そこでマックスを利用して事故を誘発し、非道にも頭を叩き潰されてその場にポイ。エスターには人殺しなど朝飯前のようだ。

そんな中、ケイトはますますエスターへの不可解な疑念を強めていく。
流産した娘のために植えたバラをむしりとって花束にしたり、弾けないはずのピアノを弾いてみせたり、ジョンにばかりいい顔をして、自分で腕を折って(ぎゃあああ、痛い痛い!)味方につけたり…
カウンセリングに行っても、何もおかしなところはないと言う。いい子を演じたエスターはストレスでトイレの中で半狂乱だったけど。
彼女の聖書に挟まれていた写真から電話番号を割り出すけれど、それははるか遠いエストニアの精神病院で、エスターがいた養護施設とは何の関係もなさそうだった。
それにしても今時のアメリカでは聖書を持ってると「キリストオタク」になっちゃうのかね?あれにはちょっと驚いた。

クラスメイトの突落としといい、シスター殺しといい、エスターの本質にいち早く気づいたマックスは、「ママを殺す」と脅されてやむなく共犯者になり続ける。
ダニエルもそんな妹の様子にちゃんと気づいたのに、なぜここで手話で会話しないんだおまえは!
口話のできるマックスに声に出して話すもんだから、エスターに丸聞こえ。凶器を隠した木上の小屋で対決するも、火をつけられてダニエルは意識不明の重体になってしまう。ここはまだ「対等な子供同士」だと思ってるから「もー、バカだね」と思ってしまった。

昏睡状態のダニエルに止めを刺しにいくエスター。マックスは慌ててママに知らせるけれど、時既に遅く、ダニエルは窒息させられ心配停止状態…からかろうじて復活。ああ、よかった。やっぱ子供が死ぬのはちょっとねぇ…
そしてケイトは半狂乱でエスターにつかみかかり、周囲から取り押さえられてしまう。

ジョンとマックスと家に帰ったエスターは、化粧を施し、セクシーな格好をして、ジョンにワインを勧めて誘惑する。
もうね、ここは非常に気持ちが悪い。もういい年をしてるのに、子役から知ってる安達祐美のおっぱいやセクシーポーズを見ると超気持ち悪いみたいなそんな気持ち。
さすがにこれにはジョンも怒り出し、エスターを叱り飛ばしてやめさせる。よかった、お父さんまともで…

一方、鎮静剤を打たれてまだ意識が朦朧としているケイトの元にはあの精神病院から電話が入る。
それは衝撃の、いやホントに衝撃の宣告だった。

「エスターという娘は、子供ではありません。こちらに入院していた、とても危険な患者です。」

えええええ!?

33歳になるリーナは、特殊な病気で大人になれない体型を利用して子供になりすまし、養子縁組した家族を惨殺していた。
しかもその動機は金や財産というより、その家の主人に懸想し、性欲ムラムラで迫っては拒否されるという「いや、それロリコンじゃないなら当たり前でしょ」という困った動機だったようだ。(パパンがウディ・アレンだったらよかったのにね!)
事実、エスターの部屋にはブラックライトでしか見えない絵が壁中に描かれているのだが、殺人や放火に混ざって、男女のイトナミが大きく描かれ、私の趣味ではないが前衛的エロ絵と見えなくもない。どんだけ性欲強いんだこいつ…

ケイトが家に辿りついた時には、エスターを拒んだジョンはめった刺しにされて冷たくなっていた。
しかし彼女にはまだマックスがいる。
娘を助け出さねば!ということで、いよいよエスターこと、殺人鬼リーナと対決の姿勢です。

このあたりでエスターは化粧を落とし、髪をひとつに縛って、子供だけど33歳らしい立ち居振る舞いを始める。
いくら子供に見えても、実際は33年生きてるので肌の衰えや体型のゆるみ、体力の衰えは始まっている模様。何より一番危険なのは歯。そりゃ9歳の子に親知らずを含む永久歯が全部生えてたらヤバいから歯医者に行きたがらないわけだ。(まぁ私は恥ずかしながら顎が小さ過ぎて未だに親知らずは生えてませんがね…)
とはいえもっと年上のケイトほどトシではないので、元気に凶器を振り回して襲ってくるエスター。当時11歳か12歳くらいのイザベル・ファーマンが、これまた賢そうなエスターと凶悪な殺人鬼のリーナを演じ分けててうまい。

せっかく警察が来てくれたのになんで外へ飛び出すんだというツッコミをよそに、最後はババア2人が冷たい池の中で足の引っ張り合い。
足を掴むエスターしぶとい、振りほどこうとするケイトも負けない、マックスはなす術もなく泣いている(どんだけトラウマになるんだ)

「助けて、ママ」
「あんたなんか、私の子供じゃない!」

ついにケイトの蹴りがエスターの顎に決まり、彼女の首が嫌な方向に曲がって勝敗が決する。
この後、「あの時、私は確かに彼女の事を蹴り落とした。けれどその後警察がいくら池をさらっても、エスターの死体は出てこなかった…」だったらめっちゃ面白いと思ったんだけど、そのへんは有耶無耶のまま終わってしまった。

いやぁ…オーメンのダミアンのような、「全てを把握し、超越した子供」なのではなく、病気の大人で、殺人鬼だった、というどんでん返しとは思わなかった。
エスターは凶暴性のある患者で、長い間拘束されていたため、首と手首に傷があり、リボンで隠していたのだそうだ。
ダニエルがエスターを胡散臭く思ったのは、同じ子供の「匂い」がしなかったからだろう。パパとママに言ったって信じないだろうし、夜中に「おまえのチンコ切るよ」とビビらされ、チビらされて可哀想に。

とにかくこの映画は、エスターがどうこうより、そもそもケイトがなぜ養子を受け入れようと思ったのかってのがネック。
男は単純なのでジョンがその考えにたどり着いちゃったのはともかく、養子なんか迎えて、これから難しい年齢になる実子たちへの影響や、実子にきめ細かく手が回るかとか、そういう事は何も考えないのかね?ホント、日本とは感覚が全然違うんだろうなぁ…

大人になれない病のエスターも哀れではあるけれど、もしかしたら精神病院での処遇も非人道的だったのかもしれないけど、わかってるだけで7人も殺してるんだからやっぱり同情の余地はない。
となると、この家での惨劇は明らかにケイトが招いた事態だったなぁと思う。

そして「ホラー映画が見たい」と思って借りたはいいが、結果的にやっぱり「一番怖いのは人間」という映画だった。
ちなみにディスクには別バージョンの結末もあって、ラストシーンで銃を構えた警官隊が突入してくると、傷だらけの顔に化粧をして、いつものように少女の服を着たエスターが「こんにちは、私はエスターよ」と挨拶して階段から降りてくるおっかねぇバッドエンドが収録されていた(こえぇ…)

でも私はやっぱり「死体が見つからない」がいいな(それもこえぇ…)

(2015/10/12 記)
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